▼ 篠原宏志会員の成果がChemical Geologyにて発表されています

A missing link between volcanic degassing and experimental studies on chloride partitioning
Shinohara Hiroshi
Chemical Geology
Volume 263, 51-59
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内容紹介:
 「火山ガス放出と塩化物分配の実験的研究の間の連環の欠落について」

 溶解度が既知であれば、マグマの上昇減圧に伴い放出される火山ガス組成変化を計算することができる。近年、噴火や噴煙活動に伴う火山ガスの組成の定量的観測が可能となり、火山ガス放出過程のモデル化に基づく噴火過程や噴煙活動の解析が進められている。マグマの脱ガス過程をモデル化するためには地殻上部の高圧から地表浅部までの広い圧力範囲において、溶解度が分圧の関数として与えられていることが必要であるが、実は火山ガス成分の中でこのモデル化に耐えうる溶解度実験データが存在しているのはH2OとCO2だけである。本論文では、塩素化合物に関して、溶解度データの不備に基づくマグマの脱ガス過程をモデル化を行う上での問題点を論じている。

 塩素化合物は、火山ガス中ではHClとして存在しているが、高温高圧化では主にNaClやKClなど塩化物として熱水(高圧火山ガス相)に存在している。この違いは、マグマと共存する熱水中のHCl/NaC比が、大きな圧力依存性を持っていることに起因する。また塩化物水溶液は混合の非理想性が強く、火山浅部の広い温度圧力範囲で気液不混和を生ずる事が知られている。マグマへの塩素化合物溶解度(分配係数)は、マグマの上昇・脱ガスが生ずる圧力範囲(0.1-50MPa)での実験データが欠落しているが、反応定数の大きな圧力依存性と溶液の非理創世が故に、実験データを広い範囲で外挿することは問題がある。これらを踏まえ、本論文では既存の溶解度実験の紹介と結果の理論的解釈により、実験データの内挿による脱ガス過程のモデル化の可能性と限界について論じている。