▼ Geochemical JournalにてExpress Letter論文が公開されました

Non-chondritic oxygen isotopic component of metals in a noble-gas-rich chondrite-vestige of stellar wind from the protosun?
Kumiko Fujimoto, Shoichi Itoh, Shingo Ebata and Hisayoshi Yurimoto
Geochemical Journal, Vol. 43 (No. 5), pp. e11-e15, 2009
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圦本尚義会員による内容紹介:
 「希ガスに富むコンドライト中のメタル相から見つかったコンドライト的でない酸素同位体組成-原始太陽風の痕跡?」

 希ガスに富むコンドライトの一つであるNWA 801 CR2隕石のメタル粒子中に含まれる微量酸素の同位体組成を二次イオン分析法により測定した.酸素同位体組成は16O成分に富む組成と地球の酸素同位体組成に近いものにより特徴づけられるバイモーダルな分布を示した.地球の酸素同位体組成に近いものは主に地球上の汚染によると考えられる.しかし,16O成分に富む組成はコンドライトにおいて見つかっている最も16O成分に富む値と同等であった.本隕石のメタルグレイン中には原始太陽風起源の希ガスが豊富に含まれている報告があるため,この16O成分に富む組成も原始太陽風を起源とするものと考えられる.一方,現在の太陽風の酸素同位体組成については,16O成分に乏しいという結果と16O成分に富むという結果の二通りがある.将来これらどちらの結果が正しいとされても今回の原始太陽風の結果との比較は,太陽系初期進化において以下のような興味深い新知見を与える.もし現在の太陽風が16O成分に乏しいならば,太陽系の惑星成長期において氷惑星や巨大惑星が多量に太陽表面に落下し,太陽表面が惑星成分で汚染してしまっていることを示す.翻り,もし現在の太陽風が16O成分に富んでいるならば,惑星成長期における原始太陽への惑星落下は少なく,その結果,現在の太陽表面は太陽系元素存在度を代表していると結論づけられる.