■圦本尚義元会長の紫綬褒章受章について

このたび,本会元会長の圦本尚義会員が紫綬褒章を受章されました.同章は,科学技術分野における発明・発見や,学術およびスポーツ・芸術文化分野において優れた業績を挙げた方に贈られるものです.

鍵裕之会長からのコメント
 圦本尚義会員の紫綬褒章受章を心よりお祝い申し上げます.
 圦本会員は先進的な実験手法を駆使して地球外物質に残された物証を丁寧に探し出し,太陽系の起源と進化の歴史を紐解く研究で世界を先導されてきました.長い年月をかけて開発した同位体顕微鏡を用いて酸素同位体の局所分析から太陽系形成の手がかりをつかみ,小惑星探査計画にも初期段階から貢献され,「はやぶさ」がイトカワから持ち帰った試料の初期分析,そしてこれから「はやぶさ2」が持ち帰る新しい試料の分析でリーダーシップを発揮されています.貴重な試料の入手,世界最高の装置作り,誰も得られない実験データの取得,そして宇宙の歴史解読,これら全てをご自身で手がけられる研究スタイルにただただ感服しております.
 圦本さんの御高名は私自身が学生の時から存じ上げておりました.私にとっては雲の上の研究者でしたが,筑波大で教員としてご一緒して御本人に初めてお目にかかったとき,圦本さんの「にこやかで溌剌とした」お姿に驚きを覚えました.そのときの印象は今でも変わりません,活き活きと若々しく,存分に研究を楽しまれながら宇宙化学の本質に迫られた圦本さんが紫綬褒章を受章された喜びを会員一同で分かち合いたいと思います.

圦本尚義会員 圦本尚義会員のコメント
 鍵裕之会長の過分なお言葉に感謝申し上げます.この度は,春の褒章で紫綬褒章の栄誉に浴し,身にあまる光栄です.私は,小沼直樹先生,長沢宏先生のアラユルニウム計画に憧れ,地球化学の研究に入りました.また,松井義人先生の一言,夢の分析装置,を信じて,二次イオン質量分析装置SIMSにのめり込みました.大学院の5年間は,毎日SIMSの制御プログラムの書き直しとサンプルホルダーの工作とSIMSの分解,修理(破壊?)をしていました.そんな私をフィールドに連れ出してくださったのが,野津憲治先生です.鍵会長に出会ったのもこの頃です.このような経緯で,地球化学会に入会させていただき,会員の皆様からご指導と叱咤激励を賜ったことが,今回の結果をいただくことになりました.活力のある楽しい学会の一員であることをとても誇らしく思います.研究成果は,私の学生の皆さんのものです.わがままな私の研究と教育活動を支えてくださった恩師,同僚,学生,大学事務の皆様,そして家族に,心から感謝を申し上げます.定年までもう少しだけ間がありますので,これまで同様,気ままに精進して参ります.最後に,会員の皆様のご健康とご研究の益々のご発展をお祈り申し上げます.

圦本尚義会員の経歴や研究については北海道大学のHPをご覧ください。
https://www.hokudai.ac.jp/news/2020/04/post-667.html