■名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻 地球化学講座

若木 重行

 地球化学愛読者の皆様、お待ちかねの「院生による研究室紹介」の時間です。今回の「院生による研究室紹介」では、名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻地球化学講座を紹介させて頂きます。

 名古屋大学の地球惑星科学教室には、大講座として地球化学講座が存在します。現在、地球化学講座には、田中剛教授、川邊岩夫教授、山本鋼志助教授、三村耕一助教授、淺原良浩助手の5名の教員と、後期課程大学院生2名、前期課程大学院生10名、学部生7名(うち留学中1名)および秘書さん1名が所属しています(図1)。また、昨年度まで地球化学講座に所属していた、年代測定総合研究センターの南雅代助教授も研究・教育の両面から講座の活動に参加されています。大学院生は、地球科学系の学部出身者以外にも、理学部化学科や薬学部(03修士卒)、工学部(06修士卒)など他学部・学科出身の者や、現役の高校教師など多種多様な経歴の持ち主が集まっています。
 地球化学講座は大講座であり、公には地球進化学講座と地球化学講座の2グループに分かれます。実際には、6名の先生方がそれぞれ独立に研究を行われているので、研究面では6つの研究室が集まっているような形になります。講座に設置されている(あるいは利用可能な)実験・分析機器は、実質6研究室ということもあり、かなりの量になります:

 表面電離型質量分析計(TIMS)2台(図2)、四重極型-表面電離型質量分析計、四重極型ICP質量分析計(ICP-MS)、ICP発光分光分析計(ICP-AES)、原子吸光分析計(AAS)、イオンクロマトグラフ2台、ガスクロマトグラフn台(nは1以上の自然数)、ガスクロマトグラフ-質量分析計、元素分析計、衝撃銃。ガスクロに至っては、現在は使用されていないものや温泉ガスの観測点に設置されているものもあるため、総数を把握する事は困難です。この他に、教室共用の蛍光X線分析計(XRF)、RIセンターのオートサンプルチェンジャー付Ge半導体γ線検出器の利用はいつでも可能です。さらに、南先生とその指導生は、年代測定総合研究センターの加速器質量分析計(AMS)および気体用質量分析計を使用しています。これらの分析機器はそれぞれ管理する教員が決まってはいますが、機器の利用にはまったく垣根がなく、学生が望めばどの機器を用いる事も可能な状態です。ですので、同一試料から多くの情報を取り出す事の可能な研究環境であるといえます。
 現在講座で行われている研究をキーワード的に挙げてみると、Ce同位体を用いた地球の物質進化の解明、地球化学図、希土類元素の安定同位体地球化学、地球化学的地震予知、希土類元素の地球化学、有機溶媒抽出金属元素を用いた環境評価、岩石中の陰イオン定量法の確立、衝撃による有機物の進化と有機宇宙化学、化石骨の14C年代測定・食性解析、南極隕石や湖底堆積物の14C年代測定、海洋砕屑性堆積物を用いた古環境解析、麦酒の美しい注ぎ方(T教授)、飲み会でのエタノール摂取が人間関係に及ぼす影響(図3)、となります。
 講座では、コロキウム(セミナー)を週1回、大講座全体で行っています。学生は年4回、教員は年1回の発表を担当し、論文紹介か自身の研究発表を行います。前述のように講座内での研究内容が多岐にわたるため、自分の専門ではない内容の話がほとんどなので、勉強になるとともに視野が広がります。自身の発表の際にも、あまり自分の研究分野に詳しくない聴衆(特に4年生)への配慮を心がける必要があり、口頭発表のいい練習になります。ちなみに、これを忘れると4年生が次々に脱落して眠りの世界へ誘われて行くのを見ながら発表する事になります。

 ここ数年講座の学生の間でブームになっているのが、餃子です。「夏と言えば麦酒」、「麦酒と言えば餃子」、という安直な三段論法に基づき、毎年7月に餃子を作れるだけ作るという趣旨の飲み会を開催しています。日頃の実験で培った技術を生かすことで、最大で800個もの餃子を作り上げる事が可能となりました(図4)。いよいよ来年は1000個の壁にチャレンジしようと考えています。

 紙面の都合で紹介しきれなかった点もありますので、詳しい情報は講座のHP(http://chibake.jp/)をご覧下さい。また、名古屋においでの際には、ぜひ地球化学講座にもにお立ち寄り下さい。