SHORTCOURSE2023
ショートコース

ショートコース

ショートコースへのご参加、ありがとうございました。参加者アンケートの結果はこちらです。

ショートコースお申し込みはこのページの下にあります。
締め切りました。9/12に参加者の方へは案内のメールをお送りしています。
メールの届いていない方や参加を希望される方は企画(福山)までご連絡ください。

日本地球化学会ショートコースは「地球化学を研究する上で必要となる基礎知識の包括的取得」や「最先端研究に触れることによる視点の拡大 」を目的とし、主に学生・若手研究者を対象に毎年開催されています。

本年度のショートコースは、9月20日(水)13時からハイブリッド(現地:東京海洋大学品川キャンパス1号館1階大講義室 2階B会場(22番講義室)に変更になりました)で開催します。今年も様々な分野の先生の、知的好奇心をくすぐるご講演を予定しています。講師のご講演後には交流会も企画していますので、ぜひご参加ください。

タイムテーブル

ご講演内容は、下記をご覧ください。

9月20日(水) 受付: 12:30〜
13:00-13:05 開会の挨拶、概要説明
13:05-13:50 髙橋先生 分子地球化学: 環境・資源・宇宙に関わる元素サイクル
13:50-14:35 福田先生 地球外物質の局所同位体比分析から探る太陽系の初期進化
14:35-14:50 休憩
14:50-15:35 坂井先生 マイクロサンプリング技術と海洋の地球化学
15:35-16:20 太田先生 データの違いが分かる研究者になろう
16:20-16:30 GJの紹介
16:30- 交流会(17:00〜大学会館が会場)・適宜解散

講師(五十音順)

太田 充恒 先生(産総研)
データの違いが分かる研究者になろう/ Be a researcher who finds the difference between data sets

  • データの平均値に違いがあるかどうかを調べるのに使われる「有意差検定」の使い方を中心に講義を行います。誤差が小さいからその平均値は信頼できると思っていませんか?2つのデータの平均値に差があるかないか、平均値と標準偏差だけでなんとなく判断していませんか?データの平均値を計算する時に、外れ値の扱いに困ったことはありませんか?分析条件を変えた時、どの程度効果があったか判断に迷うことはありませんか?3つ以上の平均値の比較って、どうやればいいか知っていますか?時間の許す限り実用的なデータ分析について紹介します。
  • 講義のキーワード:精度と確度、平均値と信頼区間、誤差の伝播、平均値の比較(t検定)、外れ値の判定、分散分析(F検定)
  • 太田先生の個人Websiteはこちら

坂井 三郎 先生(JAMSTEC)
マイクロサンプリング技術と海洋の地球化学 / Microsampling techniques in marine geochemistry

  • 地球化学おける分析技術は高分解能化・微量化が進み、その中で分析試料の精密なマイクロサンプリング技術は、精密分析の土台であり重要な位置を占めています。ドリルを用いて物理的に粉末試料を採取する最新のマイクロサンプリング技術は、1µm単位での正確なサンプリングが可能で、得られた極微量の粉末試料は、微量粉体回収装置により高い回収率で化学分析用の容器に回収できます。マイクロサンプリング技術と微量同位体比分析が有効にマッチングした好例として、微小な魚類耳石の成長稿解析による生息履歴の推定が挙げられます。 講演では、海洋の地球化学で主要な研究対象である炭酸塩鉱物の安定同位体比の分析を例にして、私のマイクロサンプリング技術開発の話を軸に(新しい研究手法の開発)、その製品化の話(産学連携と社会還元)、マイクロサンプリング法による微量同位体比分析の研究例(サイエンスへの貢献)、そして微量同位体比分析の展望(レーザー分光のポテンシャル)を一緒に考える機会にできればと思います。

髙橋 嘉夫 先生(東大) 
分子地球化学: 環境・資源・宇宙に関わる元素サイクル / Molecular geochemistry: elemental cycles in relation to the environment, resources, and solar system

  • 若い方々はGoldschmidtという名は地球化学の父として、あるいは国際会議の名称と してご存じと思いますが、実際にGoldschmidtがどのような研究をしたかをご存じだ ろうか。実際には、彼の時代には確立されていなかった同位体地球化学を除けば、 彼の研究は現在の地球化学の基盤となり、その研究領域はあらゆるsphereに広がっ ている。これらの研究を知るには、本会元会長の松久幸敬先生(地質調査所; 2003 年倉敷開催Goldschmidt国際会議組織委員長)の発案で2000年発行の地質ニュースに 連載された「現代地球化学の父:ゴールドシュミット」(B. Mason著、河田洋佑 訳)を読まれるのがよい(私の講演を聞かれるよりはるかに有意義)。そのエッセ ンスの一端は、彼の地球化学の定義「現代の地球化学は、鉱物、鉱石、岩石、土壌、 水および大気中の化学元素の分布と量、さらに原子とイオンの性質に基づいて天然 における元素の循環を研究するもの」に現れている。ここで大事なのは「原子とイ オンの性質に基づいて」という部分であり、彼は周期表を縦横無尽に横断しながら、 元素のサイクルを議論した。しかし当時、多元素混合系である地球化学試料中で、 (微量)元素の価数や元素同士の結合を直接見ることは不可能であった。しかし、 1990年代中盤以降、X線吸収微細構造(XAFS)法などの高感度な分光法の発展により、 原理的にあらゆる元素の化学状態を調べることが可能になった。そのため私が学生 時代には元素濃度や同位体比にみられる相関や経験的知見に基づいた議論が地球化 学では主体であったが、XAFSなどによる化学種解析や分子シミュレーションの発展 は、元素相関の背後にある元素同士の直接の結合や同位体分別の定量的な計算を可 能にし、「原子とイオンの性質」に基づいた議論が可能になってきた。XAFSは、研 究資金が無くても比較的簡単に放射光施設で誰でも利用できる。是非若い方々には、 どんな地球化学現象を扱うにしても、このような分子レベルの議論を取り込んだ、 より確度の高い地球化学を展開されるとよいと考えている。本講演では、このよう な分子地球化学研究の例を述べ、その重要性や面白さを伝えたい。

福田 航平 先生(阪大)
地球外物質の局所同位体比分析から探る太陽系の初期進化

  • 太陽系諸天体の多様性の起源を明らかにする上で、天体形成の母胎となった原始太陽系円盤の進化を明らかにすることは重要である。私はこれまで、二次イオン質量分析計(SIMS)を用いた高精度局所同位体分析手法の開発、および地球外物質への応用に基づき、原始太陽系円盤における物質進化の解明に取り組んできた。本発表では、始原的隕石の主要構成物質であるコンドルールの円盤内時空間分布の解明に向けた取り組みを紹介する。  コンドルールは、原始太陽系円盤内における固体物質の瞬間的な加熱溶融に伴って形成されたと考えられており、その加熱機構として原始惑星の成長に関連があることが示唆されている。したがって、コンドルールの形成時期や鉱物化学組成・同位体組成を調べることで、原始惑星形成領域における円盤の物理化学的環境を明らかにすることができる。本講演者らはSIMSを用いた酸素同位体比および26Al-26Mg年代測定法の高精度化に取り組み、始原的なコンドライト隕石に含まれるコンドルールへの適用を進めている。これまで太陽系の内側を起源とする普通コンドライト隕石中のコンドルール31個に加え、太陽系の比較的外側で形成したと考えられている炭素質コンドライト隕石中のコンドルール15個の分析を終えている(Siron et al., 2021 GCA; 2022 GCA; Fukuda et al., 2022 GCA)。年代分析の結果、普通コンドライト中のコンドルールの形成年代は、太陽系形成後~180−220万年に収まることが明らかとなった。一方で、炭素質コンドライトに含まれるコンドルールは、1個の例外を除き、内側太陽系起源のコンドルールよりも遅れて形成したことが明らかとなった(太陽系形成後~220−280万年)。このことは、原始太陽系円盤におけるコンドルール形成領域が時間とともに内側から外側へと遷移したことを示唆する。
  • 福田先生のウェブサイトはこちら

参加費

日本地球化学会の会員は無料でご参加いただけます。非会員は参加費1000円です(キャンセルの場合の返金はありません)。日本地球化学会は非常にお得な学生パック制度を用意していますので、この機会に会員になることもぜひご検討ください。

申し込み方法(申込期間:7月19日(水)〜8月30日(水)

ショートコース申込はこちら

問い合わせ先:2023年日本地球化学会ショートコース運営委員会
板野敬太(秋田大)・小坂由紀子(金沢大)・宮嶋祐典(産総研)・山田明憲(豊島電気)・若木重行(歴博)(五十音順)・福山繭子(企画幹事・秋田大)
E-mail: gsjevent+2023(at)gmail.com (atを@に変更してください)