2024 TITLE

SHORTCOURSE2024
ショートコース

ショートコース

日本地球化学会ショートコースは「地球化学を研究する上で必要となる基礎知識の包括的取得」や「最先端研究に触れることによる視点の拡大」を目的とし、主に学生・若手研究者を対象に毎年開催されています。

日時:2024年 9月17日(火)11:00-20:00 
場所: 金沢大学・角間キャンパス自然科学本館 104講義室
開催方式:対面(講演のみzoom配信あり)

本年度のショートコースの参加申し込みは締め切りました。また、非会員の皆様の参加費振込の締め切りは9/11(水)ですのでご注意ください。

タイムテーブル

10:45−11:00 受付
11:00−12:00 特別企画 座談会 『研究所ってどんなところ?』(現地開催のみ)
12:00−13:00 昼食休憩・受付
13:00−13:10 イントロダクション(zoom配信あり)
13:10−14:10 小池 みずほ 先生 ご講演(zoom配信あり)
14:10−14:15 休憩
14:15−15:15 西田 梢 先生 ご講演(zoom配信あり)
15:15−15:25 休憩
15:25−16:25 日高 洋 先生 ご講演(zoom配信あり)
16:25−16:30 休憩
16:30−17:30 吉田 健太 先生 ご講演(zoom配信あり)
17:30−17:40 地球化学若手会の紹介(zoom配信あり)
17:40−17:45 閉会挨拶(zoom配信あり)
18:00−20:00 交流会(現地開催のみ)

講師(五十音順)

「火星の石から紐解く惑星環境進化」

  • 火星隕石は、その起源が1980年代に確かめられて以降、現在までに300個以上発見されてきました。火星隕石の多くは過去の火星で作られた火山岩・集積岩・角礫岩で、様々な時代(約44億年〜2億年前)と場所(地表付近〜マントル)を記録しています。特に隕石中の水素・炭素・窒素・硫黄などの揮発性元素は、惑星の大気や水圏の挙動を反映しています。こうした火星隕石の同位体化学情報を調べれば、過去の火星の水環境や生命存在可能性を探求できると期待できます。同時に、現在は火星圏からのサンプルリターンが国際的に注目されています。発見から約半世紀の間、火星隕石は地球で入手可能な唯一の実試料として私たちの理解を助けてきましたが、その役割は次のステージに変わりつつあります。今回のショートコースでは、火星隕石から得られた火星の描像を、私自身のこれまでの研究の変遷も交えながら、ご紹介したいと思います。

西田 梢 先生(東京工業大学) 
「ピボット:古生物学から地球化学に飛び込んだ研究者の研究変遷を振り返る」

  •  近年、人為的な環境改変により、地球温暖化や海洋酸性化、環境汚染といった環境変動が急激に進行しています。このような地球環境下で持続可能な生態系サービスの利用や環境保全を遂行していくためには、環境情報や生物の生態情報の蓄積により環境変動を過去から現在へシームレスに理解し、生物への環境影響を評価していくことが重要です。生物源炭酸塩は、成長線から貝殻の成長履歴を解析でき、また、地球化学組成から生息環境や生物の代謝活動の履歴を復元することができます。本講演では、これまでに取り組んできた生物源炭酸塩の研究について、研究キャリアの変遷も交えながらご紹介いたします。講演者は、古生物分野から研究をスタートし、その後、博士課程の研究テーマを追求する中で、地球化学分野に挑戦を始めました。これまで任期付の研究者としての期間が長く、苦労もあったものの、多くの方々との交流の中で、チャレンジの連続の研究生活はとても充実した日々であり、感謝しております。研究活動を続けるなかでどのように研究テーマを選択し、どのようなアプローチで研究を開拓していくか、は自身の研究活動の重要なテーマと位置づけています。”ピボット”をキーワードとして、これまでの研究変遷を振り返りながら、同位体地球科学を中心に研究成果を講演します。

日高 洋 先生(名古屋大学) 
「核反応に伴う元素同位体組成の変動と宇宙・地球化学」

  •  放射壊変に伴う元素同位体の変動の蓄積を惑星物質中で定量的にとらえることは、年代測定や物質循環の解明につながるため、地球科学の研究分野における応用例は多数あります。また、大気に覆われていない地球外惑星物質の表面では宇宙線の照射による核破砕反応が生じており、例えば隕石や月表層物質中には核破砕反応による生成物が蓄積し、また核破砕反応に伴って発生する中性子が惑星物質を構成する元素の原子核に捕獲されるなどの反応が生じ、元素の同位体組成が変動することがあります。これら、地球外物質中の核破砕反応生成物や中性子捕獲反応生成物を定量的にとらえることは宇宙線照射環境を推定することにつながります。
     自然界の中で激しい核反応が生じた最たる例としては、オクロのウラン鉱床における天然原子炉反応があげられます。中央アフリカにある赤道直下の国、ガボン共和国東部オクロにあるウラン鉱床の一部で、今から20億年ほど前に核分裂臨界に達し、数万~数十万年にわたり原子炉反応が起こっていた痕跡が発見されたのは1972年のことになります。ウランの核分裂生成物がウラン鉱床内に長期にわたって保存されていたことから、放射性廃棄物の地層処分を考えるうえで有用な研究対象と考えられてきました。反応時に生じた多量の核分裂生成物は、生成された20億年前は放射性核種であったものの、現在では、すべて安定核種へと壊変した状態で存在しており、元素同位体組成が大きく変動しています。私も長年にわたり、天然原子炉物質のいろいろな元素の同位体分析を手がけ、原子炉反応の解析や放射性核種の移行挙動の解明に関する研究を行っていました。しかし、核燃料資源としての価値が乏しいオクロ鉱床は、その維持・管理に多大な費用がかかる等の理由により、1999年に閉山し、以降、新たに研究に使われることも少なくなってきました。これに対し、天然原子炉発見50周年を機会に、2022年以降、これまで天然原子炉研究に携わってきた一部の研究者有志の間ではオクロ研究を再度復活させようという動きがあります。どのような新展開が期待できるかについて本講演のなかで触れていきます。

吉田 健太 先生(JAMSTEC) 
「情報への距離が近すぎる便利で不便な世の中で:アウトリーチや市民科学を考える」

  • 21世紀に入ってからのインターネットの普及は目覚ましく,いつでも,どこからでも,ほしい情報にアクセスできる世の中がやってきました.例えばオンライン会議の普及によって,大事な採用面接の旅費は浮く一方で,出張先からでも会議に出ることが出来てしまう.便利な技術が本当に生活を豊かにしてくれているかは使い方次第といったところでしょうか.
     個人が簡単に情報を発信し合えるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は,研究者と市民の距離が最も近い場所かもしれません.近年,SNSを活用して市民が科学研究に参画する市民科学の事例も出てきています.地球科学は影響範囲の広い現象を扱うことも多いため,多くの参加者が活躍する市民科学と相性がよい場面も多いように思います.2021年に発生した福徳岡ノ場の噴火とそれに伴う軽石漂着現象も,SNSが軽石の拡散を把握するのに役立ちました.このショートコースでは,科学(研究)とインターネットの相互作用例を紹介しながら,上手く付き合うコツや陥穽について考えていきたいと思います.

特別企画 座談会 『研究所ってどんなところ?』

組織の研究と個人の研究の兼ね合い、取り組む研究テーマや勤務時間の自由度、予算や待遇、キャリア構築などなど…実際にどのようにして研究に取り組んでいるのか、研究所勤務の研究者に聞いてみませんか?
参加者の皆さんからの質問・疑問・知りたいことに、現役の研究所勤務の研究者たちが座談会形式でお答えいたします。質問は申込フォームから受け付けます。
本企画は現地開催のみとし、zoom配信はいたしません。

交流会

ショートコース参加者が、講師の先生方や学会理事の先生方と交流できる会を開催します。自然科学本館の食堂にて、軽食・飲み物を準備します。交流会の参加費は無料です。(現地開催のみ)

参加申込

参加費: 日本地球化学会会員  無料
     非会員        1000円(銀行振込、キャンセルの場合でも返金不可)
日本地球化学会は非常にお得な学生パック制度を用意していますので、この機会に会員になることもぜひご検討ください。交流会費は無料です。

申込期間:7月19日(金)〜8月28日(水)

申込方法:締め切りました

問合せ先

2024年日本地球化学会ショートコース運営委員会
鏡味沙耶(JAEA)・小坂由紀子(金沢大)・宮嶋祐典(産総研)(五十音順)・若木重行(企画幹事・歴博)
E-mail: gsjevent+2024@gmail.com(@を半角に変えて送信してください)