■大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻 松田研究室 宮川千絵
今回は大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻惑星科学グループ(松田研究室)の紹介です。執筆担当は博士後期課程3年の宮川です。 当研究室は松田准一教授,植田千秋准教授,橋爪光助教,松本拓也助教と研究員1名の5名のスタッフ,大学院生9名,学部生4名の計17名から構成されています(2007年4月現在)。昨年度末に大量の学生がめでたく卒業してしまい,もちろんそれと入れ替わりのように同じくらいの学生が新しく配属されてきたわけではありますが,数年来在籍していた方々がいなくなるというのは寂しいものです。こうなると,就職氷河期と言われた頃に比べ,好景気,売り手市場といわれる昨今も良し悪しという感が拭えませんが……。ともあれ,今年度4月に配属された学生さんとともに,新生松田研はスタートしたところです(図1)。 |
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学生が入れ替わっても,少なくとも1人は女子学生がいる,というのはこの研究室の不思議なところでありましょう。だからどうした,というわけではないのですけれども,付け加えておきます。
さて,当研究室ではどのような研究を行っているのか,簡単に説明していきましょう。私たちは隕石や地球岩石,または様々な鉱物を対象に,元素の同位体比測定,磁気測定,地震波測定といった,大きく分けて3つの実験手法を用いて,太陽系の初期形成史や,地球および惑星の内部構造,またその進化,あるいは惑星大気の進化などを明らかにしよう,と日夜研究に取り組んでいます。 希ガスや窒素の同位体を扱う研究には,例えば,隕石の起源や進化,また,同位体比異常からわかる太陽系外物質の研究や,太古の大気中の同位体組成,またマントル物質中の同位体分布の決定,あるいはそれらから大気・地球層構造の進化モデルの提唱,などがあります。中でも,隕石の希ガス同位体研究については,隕石中の希ガスの濃縮している成分を物理的に分離することに,当研究室では世界で初めて成功しましたことをここで申し添えておきます。ほかにも,希ガスの溶解定数や拡散係数の精密測定から,火成作用における元素の挙動を明らかにする,といった研究があり,実験対象は多岐にわたっています。隕石などは自分たちの手で採取する,という訳には行きませんが,各地の温泉ガスや地球岩石サンプルの採取は,自分たちの手で取りに行くという積極的な姿勢で取り組んでおります。また,他大学のグループと共同で,高温・高圧条件下でのサンプルを作成し,様々な物理条件下での元素の存在量を調べる,といったことも行っています。 |
![]() 地震波を扱った研究では,物性測定実験としては地殻やマントルといった環境を模した温度・圧力条件下での様々な物質の地震波速度を測定しています。こうしたデータを蓄積し,数値シミュレーションで地球内部の構造を解明しようという取り組みです。地震波の測定を行う物質は,測定精度の向上の為,大きく,かつ組成が均一な結晶であることが理想であるので,他大学のグループとの共同で,巨大単結晶の育成も行っています。とはいえ,このテーマの研究を指導されていた教員が今年度から別の大学へと栄転なさったので,実際に取り組んでいるのは院生1人なのですけれども……。 |
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![]() 研究内容や活動について,もっと詳しく知りたいという方は当研究室のHPをご覧ください。(アドレスは 冒頭で述べましたように,昨年度までいた学生が一気に卒業されたことで,学生の顔ぶれががらりと変わりました。今年度入った学生さんたちは,宇宙地球科学専攻で定期的に開催されているソフトバレー大会に,(嘘か真か)ユニフォームを作るという提案も出るほどの団結力のある姿勢も見られ,これまで以上に活気のある研究室なっております。また,他大学との共同研究の他,いわゆる外部進学の学生,国内外問わずに学生を受け入れるという非常にオープンな研究室でもございますので,興味を持たれた方はぜひ一度お出で下さいませ。
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大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻 松田研究室
2007年5月24日