■北海道大学大学院理学研究院 自然史科学専攻 宇宙化学研究室 坂本 直哉
今回は、圦本尚義教授が主宰する宇宙化学研究室を、博士後期課程3年に在籍する筆者の視点から紹介させて頂きます。宇宙化学研究室は、北海道大学 大学院理学研究院 自然史科学部門 地球惑星システム科学分野に所属しています。構成員は、圦本尚義教授、伊藤正一助教、大学院生4名、学部生1名に秘書さんを加えた計8名です(2007年7月現在)。2005年に東京工業大学から北海道大学へと、合計10トンを超す巨大な装置群と共に移ってきました。移設には様々な困難を伴いましたが、現在は装置、学生共にフル稼働しています。 |
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これまでは、主に隕石を対象として、太陽系以外の星で形成したと考えられる先太陽系物質の探索や、初期太陽系形成過程における酸素同位体不均一の解明などに取り組んできました。天然試料は、同位体比の存在度が106桁を超えるレンジに分布しているにも関わらず、その変動は一般に%オーダー未満なので、学生たちは同位体比分析の困難さに苦しんできました。しかし、一歩引いて周りを見渡しますと、隕石を相手に鍛えてきた同位体分析技術が、実に広い分野に応用できる可能性がある事に驚かされます。例えば、化学的性質の同じ同位元素は、標識分子として試料内の場をほとんど乱さない最高のトレーサーであり、同位体比イメージングを行う事で、新しい材料の設計や生体内での物質の動きを追う事などへの活用が期待されます。元々は宇宙が好きな人間の集まりですが、現在は宇宙化学だけでなく、同位体顕微鏡を用いて可能なあらゆる分野に研究の裾野を広げていく過渡期であるように感じています。
セミナーは、週一回、研究の進捗状況の報告と、個人ではなかなか勉強しない本の輪読を行っています。理論や実験系の研究室の方との距離が非常に近く、セミナーに参加して頂いたり、有用な助言を頂いたりと大変勉強になっています。装置の使用方法は、新入生には院生がついて教えますが、基本的に他の人の実験を見て分析技術を覚えるという、昔の商家や職人のような気風が残っているように思います。装置の修理のときなどは、カメラ片手に中の仕組みを知ろうと頑張っています。また、すぐ手に取れるような備品の配置を考えたり、掃除の仕方に苦心するなど、整理整頓や掃除を大事にしているのも研究室の特徴です。 |
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北海道大学大学院理学研究院 自然史科学専攻 宇宙化学研究室
2007年8月7日